推し活編の記事を書いていると、そのうち数字に飽きてきます。聖地巡礼は「行きたい」が83%、周りへの公言は「してる」が81%、推しの好きな物は「自分も試す」が81%、推し活の先行きは「一生もの」が82%。押しても押しても8割が返ってくる編です。推しがいる人だけが開くページなので当然といえば当然なのですが、偏りの大きい上位はほぼ全部この形をしています。
そこに一問だけ、まったく動かない質問があります。「推しには?」です。2,847人が答えて、「もっと有名に」が49%、「今のままで」が51%。推し活編100問のうち、票がもっとも割れなかったほうから数えて2番目、全1,000問で見ても18位の接戦でした。


「今のままで」は、応援をやめる宣言ではありません
選択肢の言葉をもう一度見てみます。反対側は「有名にならないでほしい」ではなく「今のままで」です。現状に不満がないという意味にも、今の距離感が心地いいという意味にも、変わってしまうのが不安という意味にも取れます。51%を「推しの成功を望まない人たち」と要約してしまうと、たぶん実態から遠ざかります。
想像で決めつけずに、置ける可能性を並べておきます。有名になればチケットは取りにくくなり、現場の倍率は上がります。ライブハウスで手が届いた距離が、アリーナの後方になるかもしれません。露出が増えれば、推しを知らない人からの雑な言葉も増えます。無名のうちから見ていたという自負が、うまく言葉にできないまま「今のままで」に丸をつけさせている場合もあるでしょう。逆に、今の活動量で推しが幸せそうに見えているから、これ以上忙しくしないでほしい、という読み方もできます。どれか一つが正解というより、これらが全部この51%の中に混ざっていると考えたほうが自然です。



割れているのは「推しとの距離」を聞いた問題ばかりです
推し活編で票が割れた順に並べると、上位の顔ぶれに共通点が出てきます。もっとも割れたのは「推しの共演者は?」で、約2,700人が答えて「まとめて好き」50%、「推しだけ見る」50%。次がこの「推しには?」で49%対51%。さらに「推しとの距離感は?」も約2,800人のうち「雲の上でいい」53%、「身近に感じたい」47%と、ほとんど動いていません。
割れ方の上位を見るかぎり、推しにどれだけ入れ込んでいるかを聞くと8割がそろうのに、推しと自分のあいだの距離を聞くと数字が止まるという傾向が出ています。好きかどうかには全員が同じ答えを出せるのに、その好きをどこに置いておきたいかには、共通の作法がないということです。
同じ編の別の数字と並べると、この人たちの手つきがもう少し見えてきます。周りには81%が公言していて、ファン仲間とは78%が「つながりたい」と答えています。かなり外向きです。ところが「大事なグッズは?」になると、約3,000人のうち87%が「貸せない」を選びました。話は外に開くのに、モノは動かさない。「もっと有名に」が半分で止まるのも、この線の引き方と同じ場所にある気がします。推しを広めることと、推しを自分の手元に置いておくことは、同じ人の中で同時に成り立ちます。
クイズとしては、いちばん事故る一問です
リカイドの2択は、自分で答えて終わりではなく、友達に出して当ててもらう形で遊ばれます。この性質は、記事にする数字の読み方にも効いてきます。
偏りが8割を超えた質問は、正直なところクイズとしては簡単です。相手のことをよく知らなくても、多数派に賭ければだいたい当たります。いっぽう49%対51%の質問は、多数派に賭ける戦法が効きません。相手がどれくらい現場に通っているのか、いつから追いかけているのか、そのあたりまで知らないと、コインを投げるのと同じ確率になります。同じ推しを推している友達どうしでも、ここだけは答えが割れます。
なお、推し活編の問題はリカイド本編の30問には出てきません。専用ページを選んだ人だけが答えるので、母数は3,000人前後。恋愛編の5万人台とは桁が違います。この49%は「推しがいて、しかもその話題で友達に当ててほしい人」の中での割合であって、世の中のファン全体の割合ではない、という但し書きは付けておきます。
推しへの愛情の総量は、誰に聞いてもそう変わりません。違いが出るのはその先の線引きで、そこは2択にすると急に話しやすくなります。