色紙を渡されて、名前の横に一言を求められる場面があります。卒業のとき、寄せ書きのとき、なにかの企画で座右の銘を書かされるとき。あの数十秒で出てくる言葉は、たいてい本心そのものではなく、その場で書いても恥ずかしくない本心です。リカイドの2択は、それと似た状況で答えられています。
性格・価値観編の「人生のモットーは?」は、32,851人が答えて「楽しんだもん勝ち」が86%、「誠実がいちばん」が14%でした。この編の100問を票の偏りが大きい順に並べると5位、全1,000問でも42位です。8割を超えた時点で、勝負としてはついています。


二択にした瞬間、「誠実」が選びにくくなります
まず言っておきたいのは、この2つは本来ぶつからないということです。楽しく生きることと、誠実に生きること。両方やっている人はいくらでもいますし、片方を選んだら片方を捨てるという関係にもなっていません。
それでも数字がここまで開いたのは、選択肢の言葉づかいのせいもありそうです。「楽しんだもん勝ち」は勢いのある言い回しで、口に出しても軽い。いっぽう「誠実がいちばん」は、自分から名乗ると少し重たくなる種類の言葉です。誠実さは、ふつう他人から言われて成立するもので、自己申告するとかえって嘘っぽく響く。この非対称は、答えを片側へ押す力として無視できません。
似た現象は、この編の別の一問でも起きています。「「大丈夫?」と聞かれたら?」は約35,200人が答えて、86%が「大丈夫と言っちゃう」を選びました。正直に話すほうが本当は楽なのに、その場で言いやすい言葉が勝つ。モットーの2択も、同じ力学の上に乗っている可能性があります。



この人たちは、常識も78%が「大事にする」と答えています
86%という数字だけを見ると、行き当たりばったりで享楽的な集団を想像しがちです。ところが同じ編の周辺を見ると、そう単純でもありません。
「憧れの生き方は?」は約32,100人が答えて「自由人」が81%、「生き方は?」も約33,600人のうち79%が「今が楽しければOK」でした。ここまでは一貫しています。ところが「常識は?」になると、約26,500人の78%が「大事にする」を選んでいます。楽しむ側に大きく振れておきながら、常識は守る。さらにダーク・本音編の「「いい人」と言われると?」でも、約46,800人のうち77%が「うれしい」と答えました。
並べてみると、この86%は「何をしてもいい」ではなく、枠の内側で目いっぱい楽しむという宣言に近いことが見えてきます。ルールを壊して楽しむ人の割合ではなく、決められた範囲でどれだけ元気にやれるかを競っている人たちの割合。だとすれば、「誠実がいちばん」を選ばなかったことと、誠実に暮らしていることは、まったく矛盾しません。
14%が押した「誠実がいちばん」
少数派のほうを見ておきます。32,851人の14%なので、四千人以上がそちらに丸をつけた計算です。
この選択には、上に書いたぶんの逆風があります。言いにくい言葉であること、勢いで負けること、選ぶと真面目ぶって見えるかもしれないこと。それを越えて押しているぶん、こちらのほうが意識的な回答である可能性は高そうです。信用がそのまま仕事になる立場の人、誠実さを欠いた相手に痛い目を見た経験のある人、あるいは単純に、楽しむことは前提すぎてわざわざモットーにしない人。理由はいくつも想像できますが、いずれにしても「楽しむ気がない人たち」ではありません。
そして忘れてはいけないのが、リカイドの回答が友達に当ててもらう前提で書かれていることです。この2択は、相手に「お前はこっちだろ」と言われる場面がセットになっています。「楽しんだもん勝ち」は、そう言われて悪い気のしない札です。「誠実がいちばん」を選ぶ人は、友達から真面目枠だと思われることまで受け入れて押している。14%という数字は、その覚悟のぶんだけ濃いのかもしれません。
自分のモットーを面と向かって説明するのは、たいていの場面で気恥ずかしいものです。2択にして、当ててもらう形にすると、そこがようやく話題になります。