8割を超える人が「小さな日常」に丸をつけた、という結果を、そのまま受け取っていいのかは迷うところです。この選択肢は、否定しにくい言葉でできています。リカイドの性格・価値観編にある2択「幸せの基準は?」は、32,997人が答えて「小さな日常」が82%、「大きな達成」が18%でした。編の100問を偏りの大きい順に並べると8位、全1,000問でも78位です。


言葉の強さが、票を引っぱっているかもしれない
リカイドの2択は、答えた本人が問題の作者でもあります。自分の回答をそのまま友達に解かせるので、選んだ側は必ず誰かに見えます。その前提で並べ直すと、この2つの選択肢は対等ではありません。「大きな達成」に丸をつけるには、自分の人生に達成を置いていると表明する必要がある。「小さな日常」のほうは、誰も傷つけず、誰にも反論されない場所にあります。
同じ編の周りの数字も、同じ方向を向いています。「生き方は?」は約33,100人が答えて「今が楽しければOK」が79%。「努力は?」は約34,400人のうち「報われないこともある」が68%。がんばりの価値をあまり高く見積もらない答えが、並んで多数派になっています。



お金の扱いだけ、少しねじれている
日常派が8割を占めるなら、お金より時間を取りそうなものです。ところが「ほしいのは?」は約36,500人が答えて「時間」が42%、「お金」が58%でした。時間のほうが少ない。
一方で、ダーク・本音編の「選ぶなら?」は約38,700人のうち「人望」が66%、「お金」が34%。同じ編の「宝くじで3億円当たったら?」では、約47,800人の73%が「意外と続ける」を選んでいます。お金と何かを並べたとき、お金は勝ったり負けたりします。勝つのは相手が「時間」のときで、負けるのは相手が「人望」のときです。
この並びだけを見るなら、お金は目的としてより、日常を維持するための道具として選ばれている、という読み方ができます。3億円が入っても仕事は続けるが、時間よりはお金がほしい。矛盾しているようで、生活の足場を固める順番としては通っています。ただしこれは一つの解釈で、単に「時間はあっても使い道に困る」という話かもしれません。
少数派の18%は、どんな場所にいるのか
「大きな達成」を選んだ人たちを、上昇志向という一語でまとめるのは雑です。いま目標の途中にいて、達成が生活の中心に置かれている人。競技や受験や制作のように、区切りが外から与えられる場所にいる人。達成のあとに日常のほうが良くなると、経験として知っている人。あるいは、「小さな日常」という言葉のやわらかさに乗るのを避けた人もいるでしょう。
面白いのは、この人たちが少数派だからといって、日常を軽く見ているとは限らないことです。ダーク・本音編の「過去に戻れるなら?」は約51,300人が答えて「戻ってやり直したい」が64%、「人生やり直しボタンがあったら?」も約48,700人の58%が「押す」でした。小さな日常が幸せの基準なら、やり直しは今の日常を消す操作のはずです。それでも6割前後が手を伸ばす。
つまり、幸せの基準をどこに置くかという質問と、いまの自分をどう評価しているかという質問は、別の場所で答えられている可能性があります。基準は日常に置きたい。でも、いまの日常が基準を満たしているかは、また別の話。この2つが同じ人の中に同居していても、おかしくはありません。


コンビニの袋を提げて帰る夜道や、洗濯物がよく乾いた午後。「小さな日常」と書かれた選択肢を選ぶとき、頭に浮かんでいる景色は人によって違うはずです。同じ側に丸をつけた8割の人が、まったく違うものを思い浮かべている。そこまで含めて聞き出そうとすると会話が重くなりますが、2択にして渡せば、続きは向こうから話してくれます。