「自分がロールモデル」。二択の片側にこの言葉が置かれた時点で、この質問の勝負はある程度ついていたのかもしれません。
「尊敬する人は?」に26,178人が答えて、「いる」が89%、「自分がロールモデル」が11%。心・価値観編の100問を偏りの大きい順に並べると、これが1位です。この編には「大丈夫?と聞かれたら」も「権力 vs 自由」も入っていますが、それらを抑えて先頭に立ちました。


手本は外にあって、行き先は見えていない
同じ心・価値観編の偏り2位が「10年後の自分は?」です。「想像できる」が11%、「まったく未知」が89%(約3万人)。1位と2位で、同じ89%が向きだけ逆になって並んでいます。
尊敬する人は9割にいる。10年後の自分は9割に見えていない。 手本はいるのに、そこへ至る道筋のほうは白紙という状態です。ふつう、目指す人がいれば進路も定まりそうなものですが、この二つの数字はそうなっていません。尊敬している相手は、進路の目印というより、別の場所で立派にやっている人として見られているのだと思います。あの人みたいになりたい、ではなく、あの人はすごい。そこで話が完結している。
手本になること自体は、わりと引き受けています
では89%は、人の上に立つのが嫌なのかというと、そうでもなさそうです。
「頼られると?」を見ると、「うれしい」が81%で「プレッシャー」が19%(約3万1千人)。「周りからの評価は?」も「けっこう気にする」が79%(約3万2千人)。頼られるのは歓迎するし、人からどう見えているかもよく気にしている。誰かにとっての手本になる位置は、むしろ望まれているほうです。
それでも「自分がロールモデル」は11%しか選ばれない。ここには、手本に「なる」ことと、手本だと「名乗る」ことのあいだにある段差が見えます。前者は他人が決めることなので受け取れる。後者は自分で言い切る必要があるので、途端に選べなくなる。
もうひとつ、「自分の性格は?」では「変えたいところがある」が77%、「このままでいい」が23%です(約3万2千人)。8割近くが、今の自分をまだ手直しの途中だと考えている。手直し中の自分を基準に置いてください、とは言いにくいでしょう。



選択肢の言葉が、数字を押し下げている可能性
この11%を「自分に自信がある人の割合」と読むのは、たぶん正確ではありません。読めるのはもう少し狭い範囲で、「自分がロールモデル」という言い方を引き受けられる人の割合です。
リカイドの質問は友達に当ててもらう前提で回答されます。この選択肢を選んだ自分が、あとで誰かの画面に表示される。そう想像したとき、内容には同意していても指が止まる、ということは起こりえます。心・価値観編には自己申告で答える質問が多く、そのぶん言葉づかいの影響を受けやすい編でもあります。9割という数字は、9割の心の中というより、9割が選びやすかった側の数字として見ておくのが安全そうです。
11%が立っている場所
自分をロールモデルと答えた側にも、いくつかの立ち方がありそうです。身近に手本になる大人がいないまま自分でやり方を組み立ててきた人。尊敬する相手が多すぎて特定の一人に絞れず、結果として「いる」を選べなかった人。誰かではなく去年の自分を基準に置いている人。そして、「尊敬」という言葉が重すぎて、軽い気持ちでは「いる」と言えなかった人。
どれも、威張っている状態とはかぎりません。むしろ最後のひとつは、尊敬という言葉を真面目に扱った結果として少数派に入っている可能性があります。
尊敬する人がいるか、と面と向かって聞かれる場面は、就職の面接くらいしかありません。ふだんの会話で出せば重すぎるし、答えるほうも身構えます。それでも、その人が誰の名前を出すかは、たぶんかなりの情報量を持っています。