79%という数字が、リカイドの離れた二つの編に出てきます。ひとつは推し編の「推しが目の前にいたら?」で「固まる」を選んだ割合。もうひとつは心の中編の「人見知り?」で「する」を選んだ割合で、こちらは38,485人が答えて79%でした。答えている人も、質問の文脈も違います。それでも同じ場所に着地したのは、少し目を引きます。推し編のこの一問には2,878人が答えていて、「話しかける」は21%。編内の偏りランキングでは19位でした。


推し活は、そもそも行動量が多い趣味です
固まる、という言葉から受け身の印象を持つと、他の数字と噛み合わなくなります。同じ推し編の2択を並べると、「撮影OKの現場では?」は「撮りまくる」が82%、「推しの画像は?」は「保存しまくる」が81%、「現場の日は?」は「朝からそわそわ」が79%、「聖地巡礼は?」は「行きたい」が83%です。前の日から落ち着かず、遠征し、シャッターを切り、画像を溜める。行動としては、かなり活発な部類に入ります。
その同じ人たちが、本人が目の前に立った瞬間だけ止まる。ここで効いていそうなのは意欲の量ではなく、距離のほうです。レンズ越し、画面越し、客席から。推し活で積み上げてきた行動は、どれも一定の距離を保ったまま成立するものばかりでした。距離がゼロになる場面は、練習してきた動きの外側にあります。
「何を言うか」を用意する時間があるかどうか
推しに向けた言葉自体は、ふだんから大量に生産されています。感想の投稿、友達との通話、手紙。ただしそれらには共通して、書き直せる時間と、送る前に読み返す猶予があります。目の前に本人がいる状況では、その二つが同時に消えます。
用意したはずの言葉が本番で出てこない現象は、緊張の場面では広く知られています。頭の中に候補が多すぎるほど、一つを選び出すのに時間がかかる、という説明がされることもあります。推しに対しては言いたいことの在庫が多いぶん、選び切れずに固まるほうが自然だ、という見方はできそうです。「固まる」を選んだ人が、推しへの気持ちが薄いわけではまったくない、という点だけははっきりさせておきたいところです。
話しかける21%は、どういう人たちでしょうか
21%を「度胸がある人」で片づけると、たぶん半分も説明できません。まず、推しのジャンルによって前提が違います。接触イベントや特典会が制度としてある現場では、話しかけることは特別な行為ではなく、参加した以上そうする場面が用意されています。配信者やスポーツ選手、地下で活動する人が推しなら、声をかける機会は日常の延長にあります。
言葉をあらかじめ固定している人もいます。「いつも見てます」の一言だけと決めておけば、選び出す作業が発生しません。逆に、その場の勢いを信じている人もいます。そして、仕事や学校で会う可能性がある推しを持つ人は、固まる選択肢自体が現実的ではありません。この2択は、性格の話に見えて、実は推しとの物理的な距離を測っている質問なのかもしれません。
推し編は、答えている人の濃さが違います
この数字を読むときに一度うたがっておきたいのは、回答者の層です。推し編の各問に集まっているのは約2,500〜3,000人で、恋愛編や食べ物編の数万人と比べるとひと桁小さくなります。推し編まで辿り着いて答える人は、そもそも推しがいて、推し活という言葉が自分ごとになっている層に寄っているはずです。
つまりこの79%は、「一般の人が有名人を前にしたらどうなるか」の数字ではありません。推しがいる人が、その推しを前にしたらどうなるか、の数字です。冒頭で並べた人見知り79%とほぼ同じ値でしたが、二つを同じものとして扱うのは早すぎる、ということでもあります。



会ったらどうなるかは、会うまで自分でも分かりません。だからこの手の質問は、答え合わせが楽しくなります。