リカイドの2択は、自分で解くだけでなく、友達に出して答え合わせをする形で遊ばれます。ということは「大事なグッズは? 友達に貸せる/貸せない」という質問は、貸してほしいと言ってくるかもしれない相手に向かって出されていることになります。その状況で、2,582人のうち88%が「貸せない」を選びました。推し編の偏りランキングでは5位です。


情報も感情も共有するのに、モノだけ動きません
推し編の他の数字を見ると、この人たちは決して閉じてはいません。「周りに推しは?」は「公言してる」が81%(約2,900人)。「ファン仲間とは?」は「つながりたい」が78%(約2,600人)。「撮影OKの現場では?」は「撮りまくる」が82%(約2,500人)で、撮ったものの多くは誰かに見せるために撮られています。「推しの好きな物は?」でも「自分も試す」が81%(約2,800人)でした。
名前を出し、仲間を作り、写真を共有し、推しの好きなものまで真似る。共有できるものは、かなり積極的に共有している人たちです。それでいて、手元のグッズだけは88%が動かさない。共有を拒む対象が物体に限定されているところが、この結果のいちばん面白い点だと思います。


減るかどうかより、代わりがきかないかどうか
とらの言い分は半分当たっていて、半分足りません。貸したグッズは、たいていの場合そのまま戻ってきます。それでも渡せないのは、失う確率の問題というより、代わりがきかないという性質のほうが大きいはずです。
自分が持っているものを、手放すときに実際より高く見積もってしまう傾向は、一般に保有効果と呼ばれています。推しのグッズには、それに輪をかけた事情があります。受注期間や現場が終われば同じものはもう手に入らず、しかも中身が同一の品でも「自分があの日に手に入れた一個」であることに意味がついている。同じ編の「推しに使った総額は?」で「怖くて見ない」が82%(約2,500人)という数字も、グッズが金額に換算されにくいものとして扱われていることを示しています。値段が確定していないものは、貸し借りの条件も決めようがありません。
実際、「高額グッズは?」は「貯めてでも買う」50%、「潔く諦める」50%(約2,200人)でぴったり割れています。手に入れる段階では判断が真っ二つなのに、手に入れた後は88%が手放さない。買うかどうかは財布の話、貸すかどうかはまったく別の話ということになります。
「貸せる」12%を、熱が薄いと読むのは違います
少数派の12%にも、いくつもの形が考えられます。同じ現場に通っている相手で、保管の水準がすでに信用できている場合。複数買いをしていて、保管用と使用用が分かれている場合。同じ編の「布教は?」で「ガンガンしたい」が55%(約2,200人)という数字を思えば、貸すこと自体が布教の手段になっている人もいるはずです。読んでほしい本や見てほしい円盤は、渡さないことには始まりません。
それに、貸せるかどうかは本来、相手によって変わります。2択はひとりの相手を想定して答える形にはなっていないので、12%のなかには「あの人になら」と思い浮かべて選んだ人も混ざっているはずです。逆に88%の側にも、特定の誰かを断るつもりはなく、原則として決めているだけの人が多いと思います。



見られる前提で答えている、という条件
この結果には、リカイド特有の事情も効いています。冒頭に書いたとおり、2択は誰かに見られる前提で答えられます。「貸せない」と表明することは、目の前の相手への予告にもなる。角が立ちそうな側の選択肢が88%まで伸びたということは、言いにくさを押しのけるくらい本音がはっきりしているとも読めます。ふだんは「いいよ」と言ってしまう場面でも、選択肢として並べられれば本当のところを選べる、という構図です。
数字の出どころも一応疑っておきます。推し編の回答数は1問あたり平均2,400人ほどで、恋愛編の約50,400人と比べるとかなり少なめです。後半の編まで進んだ人、つまり推し活の質問を選んで解いた層の答えである点は差し引いて読む必要があります。とはいえその差し引きは、この結果を弱めるより強める方向に働きます。推し活に前のめりな層のなかで、9割近くが同じ線を引いた。熱があるからこそ貸せない、という順序のほうが自然です。
グッズを貸してほしいと言う前に、この2択を出してみるのがいいと思います。断られてから気まずくなるより、聞かれる前に線を引いておいてもらったほうが、たぶんお互い楽です。