リカイドの1,000問を眺めていると、たまに噛み合わない組み合わせが見つかります。今回はその一つです。
ダーク・本音編の「押しに弱い?」は、48,271人が答えて「弱い」が81%、「断固断れる」が19%でした。ダーク・本音編100問を票の偏りが大きい順に並べると8位、全1,000問でも92位に入る、はっきりした偏りです。ところが性格・価値観編には「断るのは?」という質問もあって、こちらは約32,000人のうち「できる」50%、「苦手で抱え込む」50%。全1,000問を票が割れた順に並べると10番目という、ほぼ完全な引き分けでした。


「押し」には相手がいて、速度があります
言葉の形をよく見ると、ずれの理由が見えてきます。「断るのは?」は、断るという行為そのものの得意不得意を聞いています。時間をかけて考えてもいいし、あとからメッセージで伝えてもいい。落ち着いた状態での自己評価です。
いっぽう「押しに弱い」のほうには、押してくる相手がいます。目の前にいて、勢いがあって、たいていは返事を待っています。ここで求められているのは断る能力ではなく、その場の空気に抵抗する体力のほうです。同じ人が「断ることはできる」と「押されると折れる」を同時に選んでも、おかしくありません。
この読み方は、ほかの2択の数字とも噛み合います。ダーク・本音編の「宿題を写させてと言われたら?」は、約43,000人のうち83%が「見せちゃう」。性格・価値観編の「衝動買いは?」も、約34,000人の79%が「しがち」でした。どちらも、目の前に相手や商品があって、その場で返事をする形の質問です。


断らないかわりに、別のコストを払っています
では81%の人たちは、行きたくない誘いをすべて引き受けているのかというと、そうでもなさそうです。
ダーク・本音編の「誘いを断るときは?」では、約46,000人のうち「やんわり嘘も使う」が70%、「正直に言う」が30%。断る場面が来たときには、7割が嘘というクッションを使っています。さらに「行きたくない誘いは?」になると、約44,000人の64%が「行けばなんとかなる」を選び、36%が「当日キャンセルしたくなる」でした。
並べると、断るという行為が消えているわけではないことが分かります。その場では断らず、あとから角の立たない形に加工している、というのが実態に近そうです。嘘というほど強い言葉を使わなくても、予定を曖昧にする、返事を遅らせる、体調の話に寄せる、といったやり方は誰でも思い当たるはずです。押しに弱いことと、まったく抵抗しないことは別で、抵抗のタイミングが後ろにずれているだけ、という見方はできます。
「断固断れる」19%のほうも見ておきます
少数派の19%を、意志が強い人たちとまとめるのは雑だと思います。選択肢の言葉が「断れる」ではなく「断固断れる」と強めであることも効いていて、この表現に丸をつけるには、それなりの自認が要ります。
考えられる背景はいくつも並べられます。仕事や生活の都合で、引き受けたら本当に回らない人。過去に抱えこんで壊れた経験があって、そこから線を引くと決めた人。断っても関係が切れない相手としか付き合っていない人。断る技術というより、断っても大丈夫だと分かっている環境にいる、という要素は無視できません。
逆にいえば、81%が押しに弱いのは性格だけの話ではなく、断ったあとに何が起きるか読めない関係の中にいる、ということでもあります。学校でも職場でも、次の日も同じ顔を合わせる相手からの押しは、単発の勧誘とは重さが違います。



申告しやすい欠点であることも、たぶん数字に効いています
最後に、この81%という数字の取れ方を疑っておきます。
リカイドの2択は自己申告で、しかも友達に当ててもらう前提で答えられています。ここで「押しに弱い」は、欠点でありながら、わりと言いやすい部類の欠点です。人当たりがよさそうにも聞こえますし、正直に認めること自体が感じのいい振る舞いになります。反対に「断固断れる」は、頑固そう、付き合いが悪そう、という印象とも紙一重です。申告しやすさの差が数字を少し押している可能性は、頭に置いておいたほうがよさそうです。
とはいえ、それを差し引いても8割は動きません。押されて折れた経験が一度もない人のほうが珍しい、というくらいの意味には十分なっています。
ちなみに、当てるゲームとしてはかなり難しい一問です。ふだん頼み事を断られたことがない相手ほど、本人は「断固断れる」側のつもりかもしれません。