「たたかう」「まほう」「どうぐ」、そして「にげる」。RPGの戦闘画面に並ぶコマンドのうち、4番目だけは明らかに性質が違います。ほかの3つが状況をどうにかしようとする操作なのに対して、これだけは状況から降りる操作で、しかも成功するとは限らない。リカイドのゲーム編にある2択「『にげる』コマンドは?」は、2,342人が答えて「普通に使う」が76%、「意地でも戦う」が24%でした。



ゲーム編100問を偏りの大きい順に並べると、この一問は20位。全1,000問の中では205位で、はっきり片側に寄ったグループに入ります。戦うために起動したはずのソフトで、戦わない選択肢を4分の3が選んでいる。まずはこの数字が、ほかの「引き際」の質問とどう並ぶのかを見ていきます。
何をやめるかで、答えの向きが変わります
同じゲーム編から、切り上げどきを聞いている2択を集めてみます。「合わないゲームは?」は約2,700人が答えて「すぱっとやめる」が86%。いっぽう「連敗したら?」は約2,800人のうち「勝つまでやる」が56%で、「今日はやめる」の44%を上回りました。「ガチャの引き際は?」も約2,300人で「出るまで回す」が52%と、わずかに粘るほうが多い。
同じ引き際の話なのに、答えの向きがそろっていません。並べ直してみると、境目は分かりやすいところにありました。合わないゲームをやめるのは「この作品は自分に向いていない」という判断で、連敗中にやめるのは「今日の自分は勝てない」という判断です。前者は対象を切り、後者は自分を切る。86%がためらわずに前者を選び、後者では過半数が踏みとどまっています。
「にげる」は、そのどちらでもありません。作品もやめないし、その日のプレイもやめない。目の前の1回の戦闘だけを、なかったことにする操作です。切っている範囲がいちばん小さい。76%という数字は、勝負をあきらめた人の割合というより、あきらめる範囲をいちばん狭く設定できる人の割合、と読むほうが近いのかもしれません。


逃げた人ほど、すぐ戻ってきています
同じ編の「やられた直後は?」は、約2,500人が答えて「即リベンジ」が77%、「一呼吸おく」が23%でした。「『あと1回』は?」にいたっては、約2,600人のうち84%が「だいたい延長」です。撤退のコマンドを普通に使う人が76%いる一方で、負けた直後に間を置ける人は23%しかいません。
この二つは、たぶん矛盾していません。「にげる」を押すのは負けを認めるためではなく、次の1回を早く迎えるためだからです。全滅すれば拠点まで戻され、道中をもう一度歩き直すことになる。逃げれば数秒で済みます。撤退が速いことと、粘り強いことは両立します。むしろ、すぐリベンジしたい人ほど、勝ち目のない戦闘に付き合っている時間が惜しいはずです。
もっとも、この読み方が成り立つのは、負けても失うものが少ない作品の場合です。近ごろは、直前から再開できる設計が広く採られています。76%という数字には、プレイヤーの性格だけでなく、そうした設計の変化が混ざっている可能性もあります。
意地でも戦う24%が見ているもの
理由は、一つではなさそうです。逃走が必ず成功するとは限らない作品では、逃げようとして失敗し、そのぶん余計に殴られる展開がありえます。回数を重ねるほど期待値が悪くなるなら、最初から戦い切ったほうが早い。経験値やドロップを取りこぼしたくない人もいます。図鑑やコンプリート要素のある作品なら、逃げた一体はあとで探し直す手間として戻ってきます。
もう少し感情に近い理由もありそうです。物語の途中で背中を向けるのが気持ち悪い、という感覚です。同じ編の「ゲームの自由度は?」では、約2,500人のうち78%が「高いほど好き」を選びました。自由度の高い作品ほど、プレイヤーは自分の操作を自分の物語として読みます。その読み方をしている人にとって、「にげる」は戦術ではなく、キャラクターがとった行動になります。勝てるかどうかとは別のところで、押しにくいボタンになっている。



戦うか、逃げるか。ゲームの中では一瞬で決まるこの選択も、面と向かって聞くとなぜか気恥ずかしい質問になります。相手が普段どのあたりで見切りをつける人なのか、たずねる機会はそう多くありません。2択にして渡してしまえば、答えは1タップで返ってきます。