ゲームには、誰にも教わっていないのに全員がやる動作があります。町はずれの民家に置かれた壺、道端に生えた草、部屋の隅に積まれた木箱。近づいて武器を振ると、カランと軽い音を立てて割れ、たまに小銭や薬草が転がり出てくる。チュートリアルで「まずは壺を壊しましょう」と指示されたことは、おそらく一度もありません。それでも、視界に入った瞬間に手が動きます。
リカイドのゲーム編に入っている2択「壺や草を見たら?」に2,246人が答えて、「とりあえず壊す」が91%、「素通りする」が9%でした。ゲーム編の100問を偏りの大きい順に並べると、堂々の1位です。ゲームの遊び方を聞く質問はたいてい割れるのに、この一問だけは10人に9人が同じ側に立ちました。


壊す理由は、たぶん中身ではありません
壺から出てくるものは、たいてい大したものではありません。数十ゴールドの小銭、薬草がひとつ、運がよければ回復アイテム。序盤を過ぎればほとんど価値がなくなる中身のために、それでも全部割って回ります。
報酬が毎回もらえるより、出るときと出ないときがあるほうが行動は続きやすい——これは部分強化としてよく知られた話です。壺を10個割って2個から何か出る、という設計は、その条件をきれいに満たしています。開発側が意図してそう作ったのかは分かりませんが、結果として9割の手を動かす仕掛けにはなっているようです。
おもしろいのは、その先です。同じゲーム編の「回復アイテムは?」を見ると、「ケチって温存」が61%、「惜しまず使う」が39%でした(約2,300人)。壺を割ってまで集めた薬草は、6割の人のカバンの中で最後まで眠ることになります。集める行為と使う行為は、どうやら別のスイッチで動いている。ラスボスを倒した時点で回復アイテムが99個残っていた、という話が笑い話として通じるのは、この91%と61%が同じ人たちだからでしょう。


破壊は全員一致、探索は割れる
同じ「探索の丁寧さ」を聞いているように見える質問でも、数字はずいぶん違います。「マップは?」は「隅々まで埋める」が68%、「道なりで進む」が32%(約2,100人)。「街の人には?」は「全員に話しかける」が50%、「用がある人だけ」も50%で、真っ二つに割れました(約2,100人)。いっぽう「移動中は?」は「無駄にジャンプ」が83%です(約2,300人)。
並べると、境目が見えてきます。ボタンを一回押せば終わる動作は8割から9割で一致し、時間と手間が積み上がる行動になるほど票が割れる。壺を割るのもジャンプするのも一瞬ですが、村人全員との会話は数分かかり、マップの塗りつぶしは数時間に及びます。丁寧に探索する人としない人の差は、性格というより、そこに払える時間の差なのかもしれません。



素通りする9%は、初心者とはかぎりません
壺を割らない1割を、ゲームに不慣れな人たちだと考えるのは早いかもしれません。むしろ逆の可能性があります。
同じゲーム編の「神ゲーだったら?」では「何周もする」が70%(約2,100人)、「攻略サイトは?」では「まず自力」が75%(約2,300人)。二周目・三周目に入っている人にとって、序盤の壺の中身はすでに知っている情報です。中身が分かっているものを毎回割る意味は薄い。ストーリーを追うことに集中している人、決められた時間内に先へ進めたい大人、そもそも壺のない種類のゲームを主に遊んでいる人も、この9%に混ざっているはずです。
この2,246人は、どこから来た人たちなのか
最後に、この数字の出どころを一度うたがっておきます。ゲーム編はリカイド本体の全ジャンル版には出てこない、専用ページだけの100問です。恋愛や日常の質問が5万人規模で答えられているのに対して、ゲーム編がどれも2,000人前後にとどまっているのは、そのためです。
つまりこの91%は、「ゲーム編」という看板を見て、わざわざそこを選んだ人たちの中での9割ということになります。ゲームをほとんど触らない人の票は、ほぼ入っていません。壺を割る文化が体に入っている集団の内側で測った数字だと考えると、9割という高さも納得がいきます。それでも、その集団の中ですら1割が素通りしている、というほうがむしろ発見かもしれません。
家の誰かがRPGを始めたら、最初の村で壺の前に立ち止まるかどうかを、横から見ていてください。だいたい、そこで分かります。