リカイドの食べ物編は、10あるジャンルの中でいちばん票が割れます。100問のうち18問が47〜53%の範囲に収まっていて、この数はどのジャンルより多いものです。ケーキのいちごショートと濃厚チョコはほぼ50%ずつ、味噌汁の具も、鍋のシメも、おやつのグミとチョコも、判を押したように真ん中で止まります。何が好きかを聞かれると、人はきれいに二手に分かれるらしい。
その食べ物編で、いちばん票が寄ったのがこの質問でした。「たまごかけごはんは?」に24,624人が答えて、「全部混ぜる」が87%、「黄身をのせるだけ」が13%。食べ物編100問の偏りランキングで堂々の1位です。


名前が、そのまま作り方になっています
この料理には「たまごかけごはん」という名前がついています。ごはんに、卵を、かける。かけたものは、たいてい混ざります。黄身だけをそっとのせる食べ方は、この名前からいくらかはみ出していて、呼ぶとしたら「卵黄のせごはん」のほうが近いかもしれません。料理名がそのまま多数派の手順を指している例は、そう多くありません。
手順を聞く質問だから揃った、というわけでもなさそうです。同じ食べ物編の「食べ方は?」は三角食べ48%に対して一点集中型52%(約2万8千人)、「ビュッフェで最初に取るのは?」も肉・メインが51%とサラダ・前菜49%で拮抗しています(約2万9千人)。順番や手順を聞かれた瞬間、人はまた二つに割れる。
違うのは、分岐の数かもしれません。三角食べもビュッフェも、選択が何度も発生します。どの皿から取るか、次に何を口に入れるか。それが一食のあいだ繰り返される。いっぽうたまごかけごはんは、卵を割って落とした直後の一回きりで、あとは食べるだけです。分岐が一つしかない料理では、多数派の手順がそのまま全員の手順になりやすいのかもしれません。
よく見る食べ方と、よくある食べ方は違います
黄身だけをのせたたまごかけごはんは、写真にすると強いものです。白いごはんの真ん中に、崩れていない黄身がひとつ。醤油をひとたらしした瞬間の画も撮れます。混ぜたあとのたまごかけごはんには、その見せ場がありません。全体が均一な黄色になって、それきりです。
見かける頻度と、実際の割合はここで食い違います。目にする機会が多いのは前者なのに、実数は13%。ここで一度、データの取れ方も疑っておきます。リカイドは友達に当ててもらう前提のクイズなので、回答が少し「見せ用」に寄る可能性は常にあります。ただ、たまごかけごはんは基本的に人に見せない食べ方です。朝の台所でひとり、茶碗の中で完結する。盛る動機がそもそも薄い分、87%という数字はかなり素直なもののように見えます。



のせる13%が見ているもの
少数派といっても、理由はひとつではなさそうです。白身のとろりとした食感が苦手で、黄身だけを取りたい人。混ぜてしまうと味が均されるのが惜しくて、黄身の濃さを最後まで残したい人。かき混ぜているあいだにごはんが冷めるのを嫌う人。すき焼きの卵の記憶から、卵はつけるものだと体が覚えている人。あるいは単に、家でそう出されて育っただけの人もいるはずです。
この質問がおもしろいのは、どちらの答えも「作り方を知らない」わけではないところです。混ぜる側は混ぜたほうがうまいと思っていて、のせる側はのせたほうがうまいと思っている。同じ材料で、同じ道具で、同じ時間で作れるのに、仕上がりの好みだけが分かれている。食べ物編がここまで割れやすいジャンルなのは、こういう「どちらも正解と知りながら選ばせる」質問が多いからなのでしょう。
朝ごはんの席で「それ混ぜないの?」と聞くのは、思ったより踏み込んだ質問です。答えが返ってきたところで、こちらの食べ方が変わるわけでもない。それでも、その人の家の台所がすこし見える気がします。