600問もあると、なかにはずいぶん細かいことを聞いている質問が混ざります。「歯磨き粉は?」もその一つで、洗面台の、それも1日のうち数十秒しか触らない部分の話です。正直、こんなもので人柄が分かるのかと思いながら集計を見にいきました。
結果は11,174人のうち87%が「最後まで絞り切る」。「残ってても新しいのを開ける」は13%です。リカイドの600問を答えの割れなさ順に並べると、この質問は21番目に来ます。好きな食べ物より、恋愛観より、チューブの絞り方のほうが足並みがそろっているわけです。


節約しているわけではなさそうです
ここで「みんな倹約家なんですね」とまとめたくなるのですが、ほかの2択を見にいくと話が合いません。
「衝動買いは?」では「しがち」が8割近く。「お金の管理は?」でも「ざっくり把握」が8割を超えていて、家計簿やアプリをつけている人は2割に届きません。「ポイントカードは?」に至っては「断りがち」が8割強です。1円を追いかけるタイプの集団ではまったくない、ということになります。
その人たちが、数十円ぶんの歯磨き粉は最後まで絞る。ここで効いているのは金額の計算ではなく、中身が残っているのに捨てるという行為への抵抗のほうだと考えるほうが自然です。
見えているものは、捨てにくい
投じたものが惜しくて手を引けなくなる感覚は、サンクコストという言葉でよく説明されます。すでに払ったぶんは戻らないのに、そこを基準に判断してしまう、という話です。歯磨き粉のチューブはその感覚が働きやすい形をしています。あと何回ぶん残っているかが、外から見えて、手で分かってしまうからです。
同じ傾向は別のところにも出ています。「新しい家電は?」という2択では、「壊れるまで今のを使う」が8割台。まだ動くものを買い替えることに、この人たちはかなり強く抵抗します。買うときは勢いでいくのに、手放すときだけ急に慎重になる。歯磨き粉と家電は値段が3桁も4桁も違いますが、判断のしかたはよく似ています。



13%は、だらしないわけではありません
新しいのを開ける13%を、面倒くさがりの一言でまとめてしまうのはたぶん違います。
家族と洗面台を共有している人は、そもそも自分のタイミングでチューブを終わらせられません。誰かが先に開けてしまえば、残りは自然に居残ります。朝の数分が勝負になっている人にとっては、出の悪くなったチューブを絞る十数秒はまあまあの損失です。
もっと積極的な理由もあります。使いかけと新品が両方あることを、備蓄として安心に感じる人がいます。最後の一絞りを追いかけているときの、あの微妙にすり減るストレスを買わない、という選び方です。どちらが正しいという話ではなく、何を惜しむかが違うだけだと思います。
洗面台は、盛りようがない場所です
リカイドの数字を読むときは、答えが人に見られる前提で選ばれていることを毎回うたがう必要があります。恋愛観や性格の質問では、本音より少し良い側に寄ることがあるからです。
その点、この質問はかなり安心して読めます。歯磨き粉の絞り方で見栄を張っても、誰も感心してくれません。洗面台は他人に見せない場所ですし、実際「部屋は?」という2択では「散らかりがち」が8割近くを占めていて、この人たちは見栄えの悪い答えを普通に選んでいます。飾りようのない質問ほど、素の行動が出ているとみていいのかもしれません。
だからこの質問は、一緒に暮らす前に聞いておくと地味に効きます。生活のリズムが合うかどうかは、価値観の話し合いより洗面台の使い方に出ます。

